Home > 日本 > 関東 > 栃木 > 『東京発1万円の女子旅』第二回 益子(栃木)

『東京発1万円の女子旅』第二回 益子(栃木)投稿日 2013.9.14

旅行者
吉野りり花
旅行先
栃木
旅行期間
2013.09.07~2013.09.07
テーマ
top
  • 土と生きるまち 益子
  • SLもおか
  • ヒジノワ
  • 日下田藍染工房
  • 城内坂と陶芸体験
  • 関東最大の登り窯
  • 益子参考館
  • STARNET ARK

都会って一見何もかもが揃っていて便利ですよね。けれど時々なんとなく窮屈に感じてしまうことがあります。そういう時、田舎にあって都会にないものはなんだろうと考えてみます。まずは自然。山、森、生命力溢れる緑。鉢植えではなく道端に無造作に咲く草花。そして土。都会に暮らしているとどこもかしこもアスファルトで舗装されていて、土を踏んで歩くことがほとんどありません。裸足で土を踏んで歩くときの感触や、埃っぽいような土の匂い。九州の田舎で育った私はそういったものが時折無性に懐かしくなります。それから人とのつながり。人間関係の濃さは田舎らしさとして疎んじられることもありますが、人とのつながりはぬくもりでもあります。今回の一万円の旅、旅先は栃木県の益子。益子焼で知られる益子は東京から電車やバスで約2時間の距離にあります。東京からそれほど離れていないのに、豊かな自然の残るこの土地は、例えるなら『土と生きるまち』。土の匂い、野山の緑、そして人と人とのつながり。そういうものに触れたくなったら訪れてほしい場所です。

日頃から旅は平日オフシーズンと決めている私ですが、珍しく土曜日の朝早くにJRみどりの窓口に並んでいました。今回の旅で使う「休日おでかけパス」を購入するためです。この切符は土日祝のみ、東京都区内から指定区間が乗り放題になるというお得なきっぷ。益子への入り口である下館もフリー区間なので、まずこれを購入します。JRで下館駅へ、そして下館からは真岡鉄道に乗り継ぎます。真岡鉄道では土日のみ蒸気機関車SLもおか号が走っているのでこれに乗車するのが第一の目的。若干鉄分濃いめの私、はやる気持ちを押さえつつ下館駅へと急ぎました。下館駅でJR水戸線を降り、真岡鉄道のホームへ向かう途中「ピョヨォォ」と汽笛が聞こえてきました。慌ててホームへ走ると遠くからモクモクと煙をあげてSLが近づいてきます。

煙突からは黒い煙が

その黒くて重厚な車体を見たら一気にハイテンションに。というのも私、SLが走っているのを見るのは何度かあったけれど、乗るのは今回がはじめて。夢中になってSLの写真を撮っていると今度は「ボー」と汽笛が鳴り、車体両脇から白い煙が吹き出しました。煙突からは今までの白い煙とは違う黒くモクモクした煙が。そろそろ発車の時間のようです。SLに乗り込むとまるで『銀河鉄道999』の発車シーンのような音が響きわたり、SLもおか号がスルスルと走り出しました。

驚いたのが車内の煙です。SLもおか号の車内は見慣れたボックスシートですが、冷房がついていないため、窓をあけて風を入れます。そこから容赦なく煙が入ってきて車内はかなりの煙たさ、そして風に乗って煤も飛んできます。それでも物珍しく、ゴトゴトと揺れる汽車にはしゃいでいると小一時間ほどで益子駅に到着しました。

SL運転席

廃屋を利用したカフェ「ヒジノワ」

駅前ロータリーから城内坂を目指して歩く途中でヒジノワというカフェを発見。廃屋になっていた古い民家を利用したこのお店、名前の由来は土(ヒジ)の輪(ワ)。4年前に益子で土祭(ヒジサイ)というアートイベントが行われた際、地元の人が自分たちの手で改装しギャラリーとして使った古民家を利用したコミュニティカフェです。店内は外観から想像もできないほど今風の空間で、野菜やジャムなど益子の特産品を販売するスペースと、ギャラリー、カフェからなり、カフェが日替わりで運営されているのもユニークです。ヒジノワがある駅前ゾーンは少し前まではさびれたシャッター街で「忘れられた街のようだった」と土地の人は言います。土祭(ヒジサイ)では古い民家の納屋にギャラリーを作ったり、地域の食べ物を扱ったりもしたそう。益子の根っこの部分にスポットをあてた土祭は、街に新しい流れを起こしたようです。ヒジノワにもひっきりなしに人が訪れ、店は活気に溢れています。『コミュニティカフェ』の名のとおり、ここは益子の人たちの交流の場としても機能しているようです。

野菜たっぷりの四季彩プレート

野菜販売スペースで「私が作った野菜なのよ、食べてみて~」と言われてかじった地産野菜がみずみずしく、奥のカフェで昼ご飯を食べることにしました。この日のカフェは「色実茶寮×kichen CRIU」の営業日。自然食のメニューから野菜を中心とした四季彩プレート(800円)を注文しました。ふっくらと炊き上げられた赤米と、かぼちゃとひじきのサラダ、コロッケ等惣菜が数種類。特にきのことひよこ豆を使ったポタージュは野菜だけで作られたと思えないほどこっくりとして濃厚です。旅先でこんな健康的なごはんに出合えると嬉しくなります。

日下田藍染工房

ヒジノワを出て城内坂方面に向かうと坂の入り口に立派な茅葺民家が現れました。ここが伝統ある日下田藍染工房です。益子の木綿と蓼藍を使った藍染は益子焼よりも長い歴史を持ち、今も伝統の製法が受け継がれています。見学をしようと訪ねると、岩盤に円状の穴がずらっと並んでいます。これは常滑焼の甕をうめこんだ「藍甕」と呼ばれるもの。水をはった藍甕の中に発酵させた蓼藍を投入し、何度も綿を漬け込むことで次第に綿が深い藍色に染まります。工場で大量生産される染物は科学的な触媒を使いますが、ここでの藍染は空気媒染と呼ばれ、空気に触れることでのみ発色させるもの。染まり具合は職人の勘で見極めるのだそうです。

常滑焼をうめこんだ藍甕

工房の入り口には藍染の原料となる蓼藍が植えられていました。この草からどうしてあの深い藍色が生まれるのか、草木染は不思議です。最初に染液から出したときには糸はまだ緑色で、そこから何度も空気に触れることで、深い藍色へ染まっていくのだそうです。藍染に必要なのは木綿と蓼藍、そして空気、その3つのみ。また藍染にすることで木綿はコーティングを施され丈夫になります。藍染を使って仕立てられた衣服は江戸時代に日常着として重宝されました。鮮やかなJAPAN BLUEの栞をひとつ、お土産に購入しました。

蓼藍

テントには益子焼が並ぶ

城内坂には陶器を売る店やギャラリーが並びにぎやか。陶芸店に併設されたカフェもあちこちにあります。坂を上りきったあたりにあるのが益子焼共販センター。センターの前には小さいテントをはった市がたっていて日常使いの陶器が並んでいます。共販センターで益子焼をあれこれ品定めしたら陶芸体験へ。ここではロクロを使った陶芸体験や絵付け、それにロクロを使わず手で形を成型する手びねり体験もできます。湯のみ、平皿、マグカップ。自分だけの器を作ってみるのもおすすめです。

共販センターでは陶芸体験も

関東最大の登り窯

賑やかな益子中心地を過ぎ、さらに歩き続けると「関東最大の登り窯」との看板が目に飛び込んきました。益子では最古の、そして静岡以北最大の登り窯が保存されているのが岩下製陶。ここで益子町の文化財にも指定された登り窯を見学させてもらうことにしました。今では灯油を使った自動制御での窯焼が主流ですが、この登り窯が使われていた頃は窯焼は薪を使った重労働だったそうです。益子町の文化財に指定され大切に保存されていた登り窯ですが、一昨年の震災では上の方が崩れてしまい、なんとか復元されたそう。

陶器を入れる部屋

 

 

ちなみに岩下製陶でも陶芸体験ができます。こちらは少人数で職人さんにじっくりと教えてもらえるので、本格的にやってみたい人は試してみて下さい。登り窯の見学を終え、販売店である古窯いわしたで益子焼を見ていると、一味変わった作品に出合いました。それは岩下製陶の岩下宗晶さんの手になるもの。小鹿野焼や小石原焼の特徴である飛び鉋が施され、現代的な異彩を放つ陶器です。古くからの伝統を守り、若い世代が新しい風を起こす。ヒジノワでも感じた融合がここにもありました。

益子参考館

益子の陶器は益子産の良質な土を使って作られた生活の器。絵付けも少なく実用的な民具でした。その後、柳宗悦氏らとともに民藝運動を創始した人間国宝の陶芸家・濱田庄司氏が益子を拠点に創作活動を行ったことから益子焼は一躍有名になりました。土は何を使えばよいか、釉薬は何を使ったらよいか。濱田庄司氏は研究を尽くしたといいます。その濱田氏が自らの作品作りの参考に収集した品を集めたのが濱田庄司記念益子参考館。力強い「とうきび紋」や柄杓で一気に仕上げる「流し掛け」など氏の作品に触れ、彼が集めた品々を眺めることで、民藝運動で提唱された「用の美」という美意識を感じとることができるでしょう。

STARNET ARK

益子参考館の見学を終え、益子中心部から少し離れたところにあるカフェSTARNET ARKへ。外観からは分かりませんが、ここもヒジノワ同様古い民家を丹念に改装して作られているようです。店内は元々が古民家であったことを感じさせないほどの洗練された空間で、健康な野菜を使った料理やオーガニックドリンクが味わえます。

居心地のよい店内

 

 

 

駅から約3キロ、歩きまわって空腹を感じていたため、ここではSTARNET特製カレーとカフェオレを注文。食事を終え、ゆっくりとくつろぎながらふと壁際を見て驚きました。そこには「自家発電で電気を供給しています。節電にご協力ください」の張り紙が。ここの電気は太陽光発電でまかなわれている。それを知ってかなり驚きました。

STARNET特製カレー

この店のショップスペースでは有機野菜や、伝統の製法で作られた味噌・豆腐、オーガニックコーヒー・オーガニック紅茶、野草茶、そして衣類までが売られています。有機農産物を食べ、オーガニックな衣類を身に着ける。それだけならお金を出せば都会でも出来ること。けれど、ここでは太陽光で電気を作って自給している。文字通り自然との共生を実践しているんだと感じさせられました。

益子参考館前から東野バスに乗り益子駅に向かう間、考えました。益子には土とともに生きる力強さがあり、土から発生したアートを愛する人たちがいて、人々のあたたかいコミュニティがある。土とともに暮らし、土とともに生きる。こういう風に自然と寄り添って暮らすことが出来るんだな…。そんな土地を歩いて旅人の私も土のぬくもりをいっぱいに感じられた旅となりました。

 

 

 

◆今回の一万円の旅 お小遣い帳

休日お出かけパス 2600円

真岡鉄道 下館~益子790円

SLもおか整理券 500円

ヒジノワ 色実茶寮 色彩プレート 800円

日下田藍染工房 栞 475円

共販センター 陶芸手びねり体験 1580円(送料別)

益子参考館 入館料 800円

STARNET ARK 特製カレー 900円 カフェオレ 550円

東野バス 益子参考館より益子駅へ 200円

真岡鉄道 益子~下館 790円

合計 9985円

  • 土と生きるまち 益子
  • SLもおか
  • ヒジノワ
  • 日下田藍染工房
  • 城内坂と陶芸体験
  • 関東最大の登り窯
  • 益子参考館
  • STARNET ARK